今回は、前回紹介したIP呼制御装置に接続される端末となるIP電話端末とソフトフォンを取り上げる。
●キーワード解説(1) IP電話端末
IP電話端末は、文字通りIPで通信できる電話機だ。端末の種類としては、固定、モバイル、ビデオ通話機能付きの端末と、多様である。また、端末でサポートしている呼制御のプロトコルの種類も、SIP(Session Initiation Protocol:呼制御プロトコル)/H.323のような標準化されたものからSCCP(Skinny Client Control Protocol:シスコシステムズが開発したプロトコル)のようなメーカー独自仕様まで、さまざまなものがある。
業務効果
IP電話端末では内線電話番号が機器にひも付くため、利用者が座席移動する場合や引越しする際も、端末を持って移動すればそのまま移動先で同一の内線番号を使用することができる。従来のように引越し時、保守会社にPBX(構内電話交換装置)の配線作業や設定変更を依頼する必要がなくなる。また、PCと電話機の配線の一本化が可能なため、配線に掛かる時間やコストも削減できる。さらに無線IP電話端末であれば無線ネットワークをPCと共用できるため、配線は無線機器(アクセスポイント)のみとなり、固定型のIP電話端末に比べてコストをさらに抑えられる。
またビデオ通話機能の付いたIP電話端末であれば、従来、専用の会議室で行っていたビデオ会議を自席でできるメリットがある。操作も通常の電話機と同様なため、業務効率の向上も期待できる。
導入と運用
IP電話端末を導入するときに、既存の電話機とボタンの数を合わせて全く同じシステム設計にするのか、それとも新しい形で設計するかで端末の選定が異なってくる。全く同じ設計にするとユーザー側の混乱は少ないが、電話機にボタンが多く付いているため端末コストが割高になる場合や、電話機に机上を占拠される場合もある。一方、IP電話端末には画面の切り替わりを前提として作られているタイプもあり、それに合わせた新しい電話の使い方の設計が可能だ。
また、IP電話端末の導入にはネットワーク機器側での対応も必要となる。まず、IP電話端末とネットワーク機器を連携させ、音声を優先的に制御して音質を一定に保つ設定が必要だ。さらに、従来の電話機であればPBXから電源が供給されていたが、IP電話端末はPoE(Power over Ethernet)という技術でLANスイッチから直接給電できる。IP電話端末用の電源確保が難しい場合は、PoE対応スイッチを利用することで、電源の配線が不要となる。なお運用に関しては、呼制御装置側での設定変更が自動的に反映されるため、IP電話端末側の運用は機器管理のみとなる。
製品選定のポイント
最近ではいずれの電話端末も、呼制御プロトコルとしてSIPを使用している。端末が同じSIPをサポートしていれば、どのメーカーの呼制御装置にも接続できるように考えられることも多いが、異機種間では実質的に使うことができない。これは、企業向けのPBX付加機能がSIP標準仕様で共通化されておらず、各メーカーがSIPを独自に拡張して使用しているためだ。結局のところ確実なのは、IP電話端末は呼制御装置メーカーがリリースしている(公式にサポートしている)専用端末を使用することだ。
機種に関しては、固定の電話機、会議室電話、無線LAN電話機、ビデオ機能付き電話機の中から、利用方法に合ったものを選択することになる。構内PHSが導入されている場合は、PBXを残してトランク接続するか、アンテナ部分がIP化されたPHSに置き換えるか、無線LANを使ってVoIP(Voice over IP)化するかという選択肢になる。例えば、ソフトフォン(後述)が主体のMicrosoft Lyncでもハードフォンが用意されているので、同じように選択することも可能だ。その他、ギガビットイーサネット対応、ディスプレーのカラー/モノクロ表示、セキュリティ機能、電源消費といった電話機の機能面からも検討することができる。
●キーワード解説(2) ソフトフォン
PCで動作するソフトウェアベースの電話機がソフトフォンだ。ソフトフォンでも企業向けのPBXの付加機能が使用できる。固定電話機を制御するソフトウェアをソフトフォンとする場合もあるが、ここではPC上で音声を扱うソフトウェアベースの電話機をソフトフォンと定義している。
業務効果
ソフトフォンはPCにインストールするため、従業員全員にPCが配布されている場合は容易にシステムを構築することができる。また、専用の電話端末を購入する必要がなく、機器コストも削減される。さらに、引越し時にもPCを持って移動すれば全て事足りるため、運用コストを抑えられる。
導入と運用
企業によっては、全ての電話機をソフトフォン化することは、使い勝手が変化することによるユーザーの反発で難しい場合もある。そのため、社内のどの部門でソフトフォンを採用するのかを考慮する必要がある。また、ソフトフォンの導入時には、まず通話時の音声品質をどのように確保するかが問題となる。音質を保つためには、PCがビジー状態であっても優先して音声が処理される必要がある。さらに、ネットワーク側でも音声が優先して伝送されなければならない。これらの音質の問題は、標準的な音声プロトコルである程度吸収することが可能だ。
しかしながら、それも遅延やパケット破棄など音質に影響を与える現象が多く起こると難しくなる。また別の問題として、PCの信頼性の問題もある。PCから音声の優先順位を高く設定してネットワーク側に送出しても、ネットワーク側でPCから出て来た全てのトラフィックを信頼すべきかどうかということである。振る舞いの悪いアプリケーションが自身のトラフィック優先順位を高く設定してしまうこともできるため、予期しない動作をすることがあるからだ。これを防ぐため、ソフトフォンの音声を一度ローカルのプロキシを経由させることで見分ける機能を実装している製品もある。
加えて、PCへの音声の入出力用にハンドセットかヘッドセットを用意する必要がある。また、PCにサウンドカードが搭載されていない場合は、USBのタイプのサウンド機能を内蔵したヘッドセット/ハンドセットを用意することになる。
製品選定のポイント
ソフトフォンもIP電話端末と同じく、SIP対応であればフリーウェアも含めて接続は可能だが、基本機能のみの利用となる。そのため実質的には、メーカーが提供するソフトフォンを使用することになる。従来は音声機能のみのソフトフォンが多かったが、最近ではプレゼンスや
チャットの機能も同時に実装されている場合が多い。また、スマートフォンが一般化するにつれて、スマートフォン上で動作するソフトフォンも出てきている。